元ジャニーズがつづる、ジャニー喜多川のすべて

1967年にフォーリーブスでデビューした、江木俊夫の著書『ジャニー喜多川さんを知ってますか』(97年、KKベストセラーズ刊)。

(以下引用)
「ジャニー喜多川さんを知ってますか」
 こう問われたら、もちろん「はい、知ってます」と即答するほかないが、この問いかけがそのままタイトルになった1冊がある。著者は70年代のトップアイドルグループ、フォーリーブスのメンバーの江木俊夫。目次には、<「YOUたちのためだ」の意味するもの><ジャニーさんのカラーに染まるということ><ジャニーズのアイドルは、ジャニーさんのために存在する>という、魅惑のサブタイトルがズラリと並んでいる。

 本書はいわゆる暴露本・告発本とは色が異なり、ジャニーさんに関するスキャンダラスな描写はまったくない。目次からわかるように、ジャニーさんのアイドルへの思いや戦略、ジャニーズとは何たるかが、江木の目線から語られている。

 その江木は、もともと子役として活躍していた。ある日、テレビ局のレッスン場で「彼、間がいいですね。素質ありますよ……」と江木の母に声をかける者がいた。それが、ジャニーさんだった。このスカウトを受けてジャニーズ事務所に入り、「ジャニーズ」のバックとして活動、そして4人組・フォーリーブスとしてデビューした。フォーリーブスのメンバーは、初代のジャニーズJr.でもある。しかし江木は、フォーリーブスでリーダー的ポジションに立つと思っていたのに、リードボーカルに選ばれたのは、最後に加入した青山孝だった。江木はショックを受けるが、この判断は正しかったという。結果としてファンに支持されたからだ。そこには、ジャニーさんのこんな戦略があったそうだ。

「キャリアのあるメンバーを脇にして、中心になって歌うリードボーカルを支える、その役目をジャニーさんはわたしに期待したのです」

 現在も、「兄組」「弟組」的な構図で分けられているグループがあるが、やはりこのパターンが適用されているのだろうか。ほかにも、ジャニーさんがメンバーを見る上で特に大事にしていることが挙げられている。「真っ白で純粋な少年の心をもっているか」どうか。それを「自身の好みの色で染めたい」らしいのだ。ということは、いわゆる“スペオキ”と言われる面々――最近では中山優馬や佐藤勝利、岩橋玄樹などなどは、特に純白度が高かったということなのか? 「かといって、誰かをひいきするというのではありません」とあるが、最近話題になっているKis-My-Ft2やSexy Zoneの“格差”問題は? 本書で江木が語るジャニーさんの考えに、いろんなジャニーズタレントをあてはめ想像をめぐらせてしまう。

 そしてこの本は、現役のジャニーズタレントや、これからジャニーズを目指す少年たちにとっても、奔放なジャニーさんの行動や言動をひもとく“ジャニー喜多川学”の参考書にもなるだろう。「一カ月に一万通を超す」らしい応募書類に、一通一通自分で目を通し、写真を一目見ただけで、応募者の特性を見抜くというが、では、どうすればジャニーさんの目にとまるのか。

「まず顔写真を見て、なにかを感じられるかどうか、ただそれだけです。たとえ自分自身ではハンサムだと思っていても、その選択の基準はジャニーさんにしかありません」
「わざとつくった笑顔、嘘の礼儀、好かれようとする媚が見えてしまうと、けっしてジャニーさんの鑑識眼にはかないません」

 さらに、グループのメンバー選考にはちゃんと役割分担が考えられており、同じような印象のメンバーばかり集めてもダメだと、本書中でジャニーさんが語っている。
「活発そうな子、甘えん坊そうな子、明るい子、そして、ちょっと不良っぽい子……。このバランスがひとつの基準で、そのピラミッドが状況に応じて変わっていくことで、理想の型になる」

 ここでまた推察タイム。例えば嵐だったら、活発→相葉、甘えん坊→二宮、明るい→櫻井、不良→松本なのか? SMAPは活発→香取、甘えん坊→稲垣、明るい→中居、不良→木村だったりするのか、じゃあHey!Say!JUMPは? 今のJr.だと誰になる? と、想像をめぐらすのが楽しい。

■ジャニー喜多川の最高のアイドルとは?
 とにかく、この本はどのページを開いてもジャニーさん、ジャニーさん。「朝はだいたい和食」だとか、「ハワイやロスよりニューヨークが好き」といったプチ情報も満載だ。だが、そんなジャニーさんにとって、最高のジャニーズタレントは誰なのだろうか? 江木はこう言う。

「それは『郷ひろみ』だと、わたしはひそかに思っています」
 ジャニーさんは、フォーリーブスらの仕事現場にデビュー前の郷ひろみをいつも連れてきていたほど、お気に入りだったという。

「わたしは、ジャニーさんがあれほどひとりのタレントの卵に熱中したのを、いままで見たことがありません」

 ジャニーさんの眼は正しく、郷はデビューと同時に人気爆発、ブロマイド売り上げなども、フォーリーブスを抜き去ることとなる。ルックスはもちろん、ジャニーさんがかねがね言っていた内面性も、郷には備わっていた。

「率直であり、素直であり、賢くて、負けず嫌い……。努力家で意欲的なこともまた、ひろみの特質でした」

 さらに、ジャニーさんが愛する野球も郷は好きだった。しかし、郷ひろみはジャニーさんにとって「最高の」スターであったが、「理想の」スターではないと、江木は言う。 (引用元:サイゾー)
ジャニー喜多川さんを知ってますか―初めて語る伝説の実像アイドル帝国ジャニーズ 50年の光芒 (宝島社新書)